2013年5月6日月曜日

重慶火鍋@乐天府

北京には、数多くの火鍋料理店がある。

チェーン店から個人経営店も含めると数えきれない程存在しており、十件に一件火鍋を出す店があるのでは、と疑ってしまう程だ。

そんな中で、今まで私も数多くの火鍋店を訪れた。
数多く、と言っても、北京の中のほんの一握りには過ぎないが、それでも私の中で、現時点で最も優れていると思う店を、紹介しようと思う。

ここがそのお店、乐天府
鍋の湯気でガラスがもうもうと煙っていて、中の様子が見えない。

入ると、元気の良い背の小さい女性店員たちが、とても愛想よく迎えてくれる。

店に入るなり、まず最初に、火鍋かそれ以外かを尋ねられる。
そうするかしないかで、テーブルセットの状態が変わるのだ。
ここは、それ以外のメニューも安定して美味しいのだけれども、今回は火鍋を頼むこととする。

火鍋には何種類かあり、さらに季節限定の火鍋も登場する。
今回紹介させていただくのは、鸭头火锅。この店の一押し料理。
この得体のしれない名前の料理を、店員に勧められるがまま初めて頼み、
そして運ばれて来た料理を目にした時は、大層驚いた物だった。


特大の洗面器いっぱいの、鴨の首…。

洗面器の中に、何十匹もの割られた鴨の首から上が放り込まれているのがお分かり頂けるだろうか。
よく見ると所々でくちばしが飛び出している。
そして、店員から「はい」と渡されたのは、使い捨てビニール手袋。

(鍋を頼んだはずだったのに、一体どうしてこんな事に…!?)

我々は途方に暮れ、店員を呼び止め、質問をする。
「これはどうやって食べるの?」
その言葉に、店員は目を丸くして答えた。
「どうやってて、そのままだよ!」
「そのままって?」
「こうやって掴んで、そのまま食べるだけ」
どうやら、頭についた肉をまずはムシャムシャ食べるらしい。
驚きながらも、くちばしをとって、何とか食べてみようとしていると、
その様子を見ていた店員が、こちらに尋ねてきた。
「あなた達、どこの出身?」
「日本だよ」
「へ~!じゃあ日本には、この料理ないんだ?」
あるわけないだろ!


さて、気を取り直して、くちばしを手に取って、割られた鴨の頭を、口にしてみた。

う…うまい…。
割りと予想をはるかに超える旨さだった。
この頃は、我々は日本から到着したばかりで、中華料理に慣れていなかったので、
こんな料理の方式で、こんなに美味しい物が有ることに対して、本当に驚いた。
かなり辛い、しかし、花椒や八角の香りがバツグンだった。

そのまま夢中になっておよそ20羽の鴨の頭を全て貪り尽くす
食べ終わった所でどうすればいいのか分からず、店員を呼ぶと、今度は店員は空の鍋を持って店の奥に消えていった。


店員は、今度は先ほどの洗面器に、だし汁を並々と入れて再び登場した。
なるほど、恐らく、鴨で出汁を取っただし汁の中に具材を入れて、火鍋をしろという事なのだろう。

しかし、机の上に、ドンと豪快に置かれたそれは、表面にぷつぷつと油が浮き、まるで地獄のようだった。

本当にこれは鴨のだし汁なのだろうか?
運ばれてきた羊肉を、とりあえずくぐらせて食べてみる。


「…あれ?」

私は首を捻った。
辛いことは辛い。しかし、思ったほどには辛くないのだ。
それより、上品な美味しさの方が、はるかに感覚的には上回る。

まさかと思った私は、表面に浮かぶ、下品なまでに真っ赤な分厚い油の層をかき分けた
すると、その奥に眠っていたのは、信じられないくらい清湯な、鴨の出汁が効いた上品なスープだった…

この計算され尽くした鍋に、私たちは思わず拍手せずにはいられなかった。
ドヤ顔で「美味しいでしょ?」と聞いてくる店員に対し、私たちは「勿論!」と答え、親指を立てた。



この店は、マイルドな白スープと、激辛赤スープのおしどり鍋も美味しい。


なお、重慶火鍋をする際の、一般的なおすすめ具材を、ここで紹介したいと思う。
おすすめの具材は、重慶火鍋なら勿論、毛肚(黒センマイ)と鴨血(鴨の血をプリン状に固めたもの)。
主食は、緑豆で作った日本にはない乾麺、杂面が個人的にはおすすめ!

ちなみにタレは、勿論今中国で大人気の甘いごまだれ「麻酱」。

この麻酱と辛い火鍋と毛肚を組み合わせるのが至高の味だと、私は信じてやまない。






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